崖寄り添い住居セテニール3

ついに崖寄り添い住居の中へ    穏やかな老夫婦と出会う
 「オーイよさそうだぞ~」とIさんの声、一番外れの住居の前に老人が出て来てニコニコしている様子が見えた、近づいて挨拶すると、何と!中へ入れと手招きする、思わず手を差し出し握手をした。
 恐る恐る家の中に入ると、中にいたおばあさんもにこにこしている。しめた!何とかなりそうだ、心が踊る。入り口の間の居間で老夫婦と早速雑談する、と言っても、言葉は全く通じてない様子。
 壁にかかっている多くの写真に目がとまり、写真を指さして尋ねると、水を獲た魚の様に二人が先を争って話し出した。
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 招いてくれた老夫婦の住居        温かみを感じる奥様     写真一杯の居間
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素晴らしい二人                  子供の寝室            台所、風呂、食事室がある別棟
    
1枚目の写真は子供が小さいころ2枚目は息子の結婚式、3枚目は息子の子供、つまり孫の写真で現在マドリッドに住んでいると。4枚目は海軍の制服姿の若者、5枚目は娘さんその横に子供とおじいさんの写真、次から次と嬉しそうに話す老夫婦の話は尽きない。
私が居間で老夫婦と雑談している間に、3人は内部の写真を撮り、部屋などの測定もした。2階建てで2階には子供部屋があり子供たちが何時帰ってきても良いようにと昔のままベッドが3台置いてある。1階は入り口直ぐ横の居間とその奥に夫婦寝室があり、一階部分の奥行きは最初想像したよりも深いことが分かった。だが、食事室や台所、風呂などが見当たらない。二人の写真撮り、住所と名前を手帳に書いてもらって外へ出て、家の前で記念写真を撮って別れようとしたら、道を隔てた向かい建物を示し、この家も見ていけと言う。中に入ると、ここに台所、風呂、食事室があり室内はタイルなどで仕上げてあり綺麗である。更に先ほどの住居の隣の大きな扉を指さして、開けてくれた、ここが物置、倉庫でこの壁は傾斜した岩肌むき出しであった。
私の調査旅行にはいつも救世主が現れますね、感謝です、これでセテニールの「崖寄り添い住居」の図面を描くことが出来ます。
老夫婦との別れを惜しみながら、列車の時間もあるのでホステルへの道を急いだ。歩きながらふと思った、老夫婦とは言葉が通じないのに何故、あのように話が弾み談笑出来たのか不思議でならない。一生懸命育てた子供達が立派に成長し活躍している様子を、初めて会った見知らぬ外国人に嬉しそうに自慢げに話す老夫婦の気持ち、そして自分たちが苦労して岩を掘って作り子供たちと過ごした住居で楽しい思い出とともに老後を過ごす生活の中に平和な日々が流れているのか、真の気持ちを推し量ることはできない。ふと寂しさが込み上げてきた、何故だろう。
 
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                             白くて優しい村セテニール           何度も振り返りながら駅へ歩く
一直線に延びた単線路をアルヘシラス行きの鈍行列車が颯爽と太陽の日差しを正面から受けてホームに入って来た、ほぼ定刻である。逆方向ではあるが昨日同じ路線の列車でグラナダからこの田舎町セテニール駅に着いた時も時刻表どおりであった、漠然とスペインの地方列車の定刻運行は希ではないかと思っていたので、少々感心した。下車する人はぱらぱら、いつの間にか駅長がホームに立っていたが、チラッと我々を見ただけで何も言わない、ユーレイルパスの威力か、でもこの駅では改札や検札もないのですよね。この駅からの唯一の乗客である我々が乗ると列車は動き出した。乗客は少なく数人が座していたが、乗り込んだ我々をちらっと見ただけである。
もう一度来たいセテニール村、でも二度と来ることはないかも知れない、すぐに見えなくなってしまった遠くの白い村よ、幸せに。またね・・・。