崖寄り添い住居セテニール2

洞穴住居を訪ねる旅―スペイン、セニール-2 
「崖寄り添い住居」の室内を見たい
その後は耳栓のお陰様で寝ることが出来たようだ。心地よく目覚めて、時計を見ると740分。スチーム暖房のお陰で部屋は暖かい、起き上がってトイレに行き、帰りに昨日浴槽で洗濯して室内に干しておいた洗濯物に手をやると、さすがよく乾いている。何か耳が気になる、昨夜耳栓をしたことに気が付き取り出そうとしたが出て来ない、指でつまみ出そうとしてもますます中へ入ってしまいそう、執拗に何度も取り出そうとするが駄目である。腹立たしげに仕方なく諦める。でもヤッパリ気になる。
8時頃にやっと窓の外がうす明るくなってきた。昨日グラナダ18時過ぎてもまだ太陽は山の頂上付近にあったことを思い出した。スペインは首都マドリッドが西経3.7度、バルセロナが東経2.2度、サンティアゴ・デ・コンポステーラが西経8.6度と東西に長いが、全土で標準時間として中央ヨーロッパ標準時間(+1時間)を使用している。日本で慣れている時刻と太陽高度の関係と少し違っているような気がした。
8時半頃、隣室の2人に廊下から声をかけるが、全く反応がない、まだ寝ている様子。ドアをノックするが反応なし、仕方なく強くドアを叩いた。「寝過ごした!」と言って起きて来た。疲れと部屋の快適さとでグッスリと眠っていたとのこと、これも若さですよ。急いで支度をして部屋に荷物を置いたまま9時頃ホテルを出て村へ調査に出掛ける。空気が冷たくヒヤッとしたが、気持ちの良い朝の空気を身体一杯に吸いながら坂道を下り町中に向かい、クエバスらしきものはないかと周囲を見渡しながら川沿いに歩いた。しばらく探し歩いたがクエバスらしきものは見当たらない、急に空腹を感じる、無理もない何も食べずにホテルを出たなりである。朝食するような場所はないかと歩いて行くと、橋のかかっている三差路で「CUEVASと写真機」の案内看板を見つけた。看板に従って、右の道を川沿いに進むと両側に岩の崖が現れ、気がつくと崖の下を歩いている。歩いている道の更に下方の谷底に水が流れているのが見えた。Vカット断面状の谷底に流れる川の両側に幅約56mと34mの道があり、その谷底の崖に沿って岩屋住居が崖にへばり付くように連なっている。歩いている道(幅約56m)の約156m上の崖の頂部には小道が見え、更に野菜畑やオリーブ樹木園が広がっている様子も見える。対岸に見える粗末な掘立て小屋風の崖寄り添い住居に比べ、こちら側の住居は、奥行きこそ岩の崖に阻まれて24mと思われるが道に面した正面の外壁はレンガやブロックが積まれており23階建てと見うけられる白色の外壁が連続している様子は瀟洒な感じさえ受ける。外壁の様子を写真に撮ろうとしたが、逆光であるため午後に再びこちらへ来ることにして引き返した。
三差路まで戻り今度は左の道を進み、自動車がやっと通れる程の狭い坂道を上る。上るに連れて、眺望が開けてきて家々の白壁が朝日に反射して眩しい。傾斜面にへばり付くように建て込んでいる家々の間を縫うように続く石畳の小道を上る。その小道沿いにあった小さな店やでパン、牛乳、ハム(ベーコン?)、オレンジ等自分の好みの物を買い込んで、町の中心と思われる場所へ向かう。途中、公衆電話ボックスを興味深そうに覗き込む。10時頃、銀行兼郵便局を見つけて210USドルを両替したが、レートの高低などに気が回らなかった。バルなどの店があり、車も23台止まっている広場にたどり着いた。バルでコーヒーを注文して椅子に座り、先ほど買い込んだパンと一緒に食べる。何となく体がだるい。
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町の中心部                                     掘立小屋風崖寄り添い住居 
 
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近代風な崖寄り添い住居                  覗いた室内も漆喰で綺麗
崖寄り掛かり住居の内部が知りたくて、家の前で遊んでいた子供に声をかけ、返事も聞かずに中を覗き込み写真を撮り、更に隣の部屋で食事をしていた家族の様子もとカメラを向けたが、主人に断られて、渋々外へ出た。でも素早く間取りを頭にたたき込み概略の間取りを推測した。奥行きは約4m1階に2部屋あり、覗いて入り込んだのは2階部分で、玄関と居間、そのとなりに食事室(4×4m)があり食事室に階段があり、3階は屋上のベランダ(洗濯干し場)へ出るためのペントハウスがる。3階建てで屋上には迫り出した崖にひっつくように、白く塗った貯水用のドラムカンが置いてある。外から写真を数枚撮らしてもらった。
町の中心部を離れ、村全体を見るため更に坂道を上る。西側の高台にたどり着きそこから眺めると、この白い村は緑の山に抱かれた崖の村、遥か遠くの北東の山の頂付近にも白い家々が見える、あそこにもこんな童話のような村があるのかな~ともの思いにふける。太陽にきらきら光る家々を見下ろしていると、今は冬だが、この地の夏の暑さや夏の太陽光の凄さが想像できる。それにしても、人はどこにでも住めるのだな~、そして住めば都か、白壁と薄茶色のスパニッシュ瓦、人間の大きさと温かさと、自然を大切にした村、セテニール。風がそっと頬を撫ぜた、なんだかとても嬉しくなってきた。
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          西側高台からの眺望                 高台端に見える教会 
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          対岸の崖下住居                  連なる「崖寄り添い住居」
この高台の端に大きな建物があり、教会だと言う、行ってみたい気持ちはあったが疲れを感じていたのでそこまで足を延ばすことなく高台を後にした。冬とはいえ汗ばむ陽気に崖の日蔭で休みながら急坂を下り、朝通ったクエバスの連なる谷川沿いの道に出た。
人が生活しているクエバス、生きているクエバスの内はどのようなものなのか、奥行きは、内部の壁は、天井は等など、知りたくて、半開きになった入り口から中を覗き込みながら歩くが、どのクエバスも内部はなかなか見ることが出来ない。外にいる人にカメラを見せて、ジェスチャーで室内を撮らしてくれないかと頼んだが、皆、手を顔の前で振り、駄目ですと断られた。そうですよね、突然見知らぬ人間がやって来て、家の中を見せてくれと頼まれても、殆どの人は断るでしょう、自分でも日本で躊躇します。それにしても、今まで見たこともない住まい群なのです。地下式、地中式との表現は当てはまらない、洞窟形式でもない、ひと先ず「崖寄り添い住居」としておこう。外から見景観はこの地の自然とマッチしていると感じる。内部はどうなっているのか、と思うのは当然でしょう。先へ先へと歩き、連なる「崖寄り添い住居」群が途切れたところで、小休止した後、これぞ「崖寄り添い住居」と思われる家の外観の写真を撮る。更に、川沿いに歩き、とうとう住居群の外れへ来てしまった、この先にはもう住居は無さそうだ。ついに内部を見ることは出来ないのか、と道路の真ん中に立って対岸の崖寄り添い住宅と崖の上の教会を見上げた。すると・・・
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             崖寄り添い住居上方のオリーブ畑         崖住居の上の教会
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           迫り出した崖下の崖寄り添い住居